うやむやを聴いたヲタクのアイドル歌唱と自担の話

これは、いちアイドルヲタクの雑感である。



私はアイドルヲタクをしているなかで、いつもこの子は歌がアイドル歌唱だから好きだと答える。
顔や性格と同等、いやもしかしたらそれよりもっと贔屓にするメンバーを決めるときに重要な要素かもしれない。


アイドル歌唱とはなにか。

甘ったるい声?鼻濁音?独特のしゃくり?息遣い?
当時、ちょうどいい表現が思いつかない自分がいた。



クリスタルボイス、キャンディーボイス、キャラメルボイスそう例えられるアイドルは歴史上多数存在する。

やはり代表格は松田聖子だ。

チェリーブラッサム - Single by Seiko Matsuda | Spotify

私も松田聖子の楽曲が好きでよく聴いている。(↑お気に入り)
アイドルの中のアイドル。彼女の存在が後のアイドル史に多大なる影響を与えた。

あるバラエティ番組で松田聖子の歌声をマツコデラックスが「絶頂時の声」と例えていた。
彼女特有の発声と息遣いがセクシーということだろう。
または、少し辛そうにも聴こえる喉を締めたような歌声か。
その例えがアイドルに対してアリどうかはさておき、私が腑に落ちるための足掛かりになった発言で、非常に記憶に残っている。

また、「甘い歌声」で検索をかけてみるとある記事にたどり着いた。

甘い歌声の出し方について

この記事でも甘い歌声のことをセクシーな声、語尾に吐息感のある発声と定義しており、より説得力が増す結果となった。

このことから
アイドル声(〇〇ボイス)≒甘い歌声≒セクシーな声
として考えることができるようになったのだ。



また一方で近年ハロープロジェクトにおけるクリスタルボイスといえば宮本佳林だろう。


宮本佳林松田聖子に憧れたアイドルの1人であり、声質もガラス細工のように繊細で「アイドル声」そして「アイドル歌唱」の代名詞とも言えるだろう。

なぜ、松田聖子の次に宮本佳林を挙げたかというと、私のアイドル歌唱の定義を定義した動画が彼女のボイストレーニング映像であったからである。(映像31:38〜)


この動画において注目したいのは、36分あたりからのボイストレーナーの菅井先生の発言である。




「ぐにゅり」




上擦った声、辛そうな声を表現する単語として、これ以上に“アイドルらしい”単語があっただろうか。

菅井先生の話によると筋肉の使い方の話らしいが、詳しい言葉の説明がなかったため定かではない。

しかし、この歌い方(筋肉の使い方)ができるアイドルこそアイドル声の持ち主、アイドル歌唱の使い手と言っていいのではないか。


“ぐにゅり”とする歌い方。


これこそが私のアイドル歌唱の定義となった。








本題に入る。

ある曲のミュージックビデオが先日解禁された。


SixTONESのファーストアルバム通常盤に収録されている「うやむや」という曲である。

いわゆるボカロ曲を彷彿とさせるこの曲は、MVが解禁されたことにより一層ボカロを意識していると確信できる楽曲となった。
結果、解禁されてからさまざまな界隈の人が聴くこととなり、それが再生数にも現れていると言えるだろう。

この曲で一番注目したいのはリレー形式で歌いつなげているというところである。
公式サイトに歌割りが公開されているので参照してもらいたい。

リズムと語感を重視した歌割りで、特にサビでは頭の2文字(2音)を被せるようにして歌っている。
人数が多いグループアイドルにおいて、歌詞がぶつ切りになるのはよくあることであるが、言葉と言葉の繋ぎ目にムラが出てしまうことが度々指摘される。
この曲はボカロ曲のように言葉数が多いのでよりそれが懸念された結果なのかはわからないがそのような工夫がされているのだ。

こうやって歌いつなげることで、いつもは歌割りの偏りが出てしまう場面においても平等にそして細かく区切られることがこの曲における工夫がもたらした恩恵とも言えるのだろう。



そして私がこの曲を初めて聴いた時、アイドル歌唱を感じた部分がある。

リスクは大好きいつまでたっても
嫌になるのも絵になる

森本慎太郎の歌唱部分だ。

森本慎太郎はファンによく「キャラメルボイス」などと呼称されるほど甘く、そして心地の良い語尾の処理が特徴的な歌声の持ち主である。ガタイの良いワイルドな容姿から生み出される甘い歌声は、大いに彼のギャップとなって活きている。


特にこの歌唱部分の「絵に“なる”」という部分には、まさにぐにゅり歌唱が使われている。
そして、彼特有の語尾も合わさり非常に印象強いパートになっている。



アイドル歌唱はアイドル特有のモノである。

逆を言えば、アイドルソングはアイドル歌唱が使われることでアイドルソングとしての体を成す部分があるし、(純然たる歌の上手さとは別の個性として)アイドル歌唱を身につけることで自分の武器にするアイドルも多い。


SixTONESはこの「うやむや」という曲で、そうした“武器になる美しく完璧なアイドル歌唱ができるメンバー”を引っかかりになるパートに決め打ちできるほどの歌唱メンバーの層の厚さを見せているのだ。

ある種の飛び道具として起用できるほど他のメンバーにも歌唱力があり、そしてお互いがお互いに引き立つ歌唱パートの選定が可能なのは、今後も幅広いジャンルの楽曲を歌うアイドルSixTONESとしての強い武器であろう。

ぜひ「全く同じボイストレーナーなど」に「全く同じ発声や歌唱法」を習うのではなく、このまま全員の歌の個性を活かす形でのそれぞれに合った歌唱力の伸びをこの目で見届けたい。




ぐにゅり